とは言ってもまわりには大勢のランナーがいるため全力で走っても人をよけながらジグザグにしか走れない。
今までのマラソン大会で歩いてしまったのは、前半に飛ばしすぎたせいだ。
初心者は気持ちとしてついつい、余裕のあるうちに距離と時間を稼いでおきたいと思ってしまって前半にエネルギーを使いすぎる。
今の自分の体力では全力で行ってなんとかなるのはハーフくらいまでだ。
だから、今大会ではその点は特に慎重になる。
コースに置かれた距離標識は幸い5キロごとにある。
5キロ30分のペースで走ろうと決めて、はやる気持ちを抑えながら足を一歩一歩前へ出す。
その日は大変天気がよく、富士山をながめながらのランは気持ちがいい。
河口湖に移る逆さ富士も見事だ。
湖畔を颯爽に走る。
しかし、走り始めてすぐに左ひざに違和感を覚えた。
左ひざはいつも痛くなる。
まだ痛いというほどではないがなんとなく嫌な予感を感じさせる違和感だった。
できるだけ間接にダメージを与えず、筋肉で路面と接地した時の衝撃を受けるように心がける。
マラソンは、自分と身体との対話だ。
痛みはないか、一部に過度な負担がかかっていないか、呼吸はどうだ。
身体のすみずみまで意識を傾けてその声を聞く。
そしてそのメッセージを受け取り走り方を微調整する。
5キロを過ぎたとき、タイムは30分をすぎたところ。
キロ6分で走れている。
違和感を感じていた左ひざも調子が良さそうだ。
込み合っているエイドステーションを横目に通り過ぎる。
毎回どのマラソン大会でも一番目のエイドステーションは通り過ぎることにしている。
そして10キロ地点。
タイムは58分を過ぎたあたり。
どうもペースが上がってしまっていたようだ。
調子よく走れている。
問題はない。
次も5キロ28分ペースでいくか。
28分ペースでいけばサブ4も夢じゃない。
そう思ったのが間違いだったと気付いたのは、まだずっと先のことだった。
早く〜